★キューバ共和国大統領ディアス=カネル・ベルムーデス インタビュー:イグナシオ・ラモネ(ジャーナリスト) 

キューバは決して傍観してこなかった

 

第2ブロック:キューバ経済について

 

イグナシオ・ラモネ:大統領、私たちはインタビューの第2ブロックである経済に関する質問を取りあげますが、基本的に4つの質問をするつもりです。

 

一つ目は次のようなものです: キューバ経済の現状をどのように評価されているのか、また、封鎖に加え、現在の課題、例えば、すでに部分的に取りあげられたインフレ、生じている部分的なドル化、また、海外からの直接投資の不足などに対して、政府がどのような対策を講じておられるのか、お聞かせください。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:ラモネさん、質問の一部は、封鎖が何を意味するかを説明したときに出されたものだと思います。と言いますのは、説明しましたが、経済の新しい状況を招いているのはまさに封鎖だからです。

 

つまり、この状況を克服するために私たちが何をしようとしているのかということに焦点を当てるために、要約すると、今日の経済は困難な条件の中でも機能しており、経済的不均衡のグループ全体が存在しているということです。

 

では、この状況に対処するために、私たちは何を提案しているのでしょうか? まず、2030年までの長期にわたって実施されるマクロ経済安定化プログラムを策定しました。 また、できるだけ短期間に国が必要としているマクロ経済の均衡を達成するために、常に調整しなければならないということです。そこでは、インフレの問題、為替市場の問題、もちろん為替レートの問題、通貨政策、財政政策、国内生産及び輸出奨励策に対処しています。また、賃金、年金、雇用、経済制度の再構築の諸要素にも及んでいます。また、私たちの資金の使用、資源の割り当て、国営企業の役割、国営企業とその他の経済アクターとのと関係する政策にも及んでいます。

 

さて、この政策にはいくつかの前提があります。一つの前提は、国内生産を奨励する方法を追求していることです。なぜなら、国内生産を奨励することで、経済主権を得るからです。国内生産を奨励すると、国内の需要を満たすこともでき、国内市場が発展の源となるからです。

 

イグナシオ・ラモネ:とりわけ農業、たとえば食料主権について、考えておられるのですか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:私たちはまさにそれについて話しているのです。

 

私たちは、国が必要とする食料の大部分を生産し、輸入を減らすことができます。現在、食料を輸入するためには20億ドル以上の資金が必要ですが、それを投資すれば、必ずしも同じ量かそれ以上の食料を輸入しなくなるのです。反対に輸入が減ります。価格が上昇しており、海上運賃が値上がりしているからです。

 

さらに、国内生産の増加とその効率化によって、外貨をもたらし、国内生産を持続可能なものにするために、輸出競争力を獲得するでしょう。

 

この、特に農業の国内生産の奨励という概念は、全国的規模では行っていません。おこなっている規模は、地方的規模で作っています。どのように、各基礎行政区が、基礎行政区の自給計画をもつか、どのように各県が県の自給プログラムをもつか、を進めています。それらすべての努力は、共同体、居住地から、基礎行政区、県を経て、国に至るまで、行われており、国の食料事情を安定させるように考えています。

 

だからこそ、私たちは食料主権政策を策定し、食料主権法があるのです。

 

イグナシオ・ラモネ:それは成果を生んでいますか?あなたは、成果を見ていますか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:経験があります。 1月以来、私たちは毎月国内の全県を訪問し、各県で毎月異なる基礎行政区を訪問しています。

 

私たちは、何を見たでしょうか? 労働者や勤労者の集団が、その指導力によって、封鎖が強化された状況下でも、すべての他の人たちと同じように、違うやり方をし、私たちが達成しなければならないこと、多くの場合食料生産の面においても、答えを見出しています。 この点で、私は非常に興味深いものをいくつか見てきました。

 

イグナシオ・ラモネ:それは国内の他の地域にも拡大できるのでしょうか。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:そうです。しかし、現在は、それは例外です。

 

そこなのです。私たちが訪れた他の場所でも、努力が適切でなかったり、集団が封鎖の制約の重さに圧倒されていたり、私たちが発展させたいと考えている創造的な抵抗の考え方ではなく、「私は封鎖の影響をこれだけ受けている、しかし封鎖の条件においても、これと、これを行い、克服し、前進できている」と考えているのです。

 

私たちが望んでいるのは、ですから、着想家なのです。刺激的な人たち、異なるやり方をする人たちの手本に触発された人たちが、その経験を身につけ、より良い成果を上げるようになることです。そうすれば、現在例外であることが、法則になるのです。

私たちは、科学とイノベーションに基づく政府行動システムを選択し、あらゆる分野に適用しています。そうしてCOVID-19に取り組み、今では農業分野、工業分野、食料生産問題にも適用しています。

 

 

しかし、すでに興味ぶかいことが起きています。というのも、私があなたと共有しているこれらの確信や基準は、呼びかけでもなく、私たちの宣伝でもなく、このような確信を持っているのは、まさにこの国の各地を訪問した際に目にしているものだからです。

 

そこで、例えば、3月と4月の視察では、非生産的、非収益的、非効率的な結果で昨年2023年を閉じた場所が、このような状況から脱却し、こうした新しいことに近づき始めていることを観察し始めました。さて、私たちは何を達成しなければならないのでしょうか? この変革が長期にわたって持続可能であることです。そこに答えがありますし、私たち自身が答えを持っているのです。

 

その後、地域の指導者たちと共有するときに、私たちは彼らに何を言うのでしょうか? うまくいっていない地域を、うまくいっている地域の概念に連れていかなければなりません。そこにこそ、経験があるのです。

 

国の各地域で、私たちが必要としている生産的なレベルの活動や貢献がまだ行われていないが、こうした手本に光があるのを見るのは、とても刺激的です。

 

イグナシオ・ラモネ:国の側では、新しい生産を促進するために必要な法改正が行われましたね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:依然として、国営企業が、非国営企業が操業しているのと同じ条件のもとで操業することを保障しなければなりません。しかし、今日、国営企業には多くの権限が与えられています。しかし、それは、必ずしも十分に利用されていません。それがより先進的で柔軟な企業理念とともに使われるようになれば、間違いなく影響を与えるでしょう。

 

それで、基本的な概念は、科学とイノベーションです。 私たちのような貧しい国、天然資源は少ないが人材は豊富な国には、フィデル最高司令官によって創設され、ラウル革命軍将軍によって継続され、このような状況の中でも拡大・更新され続けている構造があります。そのため、私たちは科学とイノベーションに基づく政府行動システムを選択し、あらゆる分野に適用しています。 COVID-19に取り組み、現在は農業分野、工業分野、食料生産問題にも取り組んでいます。

 

また、弱い立場にある人々や家族への配慮もあります。適用するそれぞれの措置は、弱者や弱い立場の家族に影響がないように、扱わなければなりません。というのも、私たちの目的は不平等を拡大することではなく、反対に、不平等格差を縮小することであり、私たちが生み出すことのできる富は私たちが分配することができるものであり、社会正義のもとに分配するものであるという認識のもとに、私たちが生み出すことのできる富を生産すことができるのです。

 

イグナシオ・ラモネ:大統領、近年キューバ経済に起こった変化の中に、市場経済の出現がありますね。特に、このことは、最近中小零細企業の発展とともに、拡大しています。キューバの経済構造を変えつつあるこの現象について、どうお考えですか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:この点に関して、いくつか明確にすべきことがあると思います。

 

第一に、キューバには市場の動向を考慮した計画経済がありますが、純粋な市場経済に基づく経済ではありません。社会正義の概念があり、市場の法則は経済発展を推進するものではありません。なぜなら、人々の利益が考えられているからです。そして、しばしばキューバ経済の効率性は、純粋に経済学的な観点から批判されることもあります。しかし、私はこう言っています。この封鎖された経済、私たちのすべての必要を依然として満足させておらず、今日キューバが権利としてもっている重要な社会的成果を維持している経済なのです。しかし、多くの面で依然として成果がないものもあります。ですから、キューバ経済の正確な行動を評価することには、一定の不公正もあると思います。一方では計画経済ですが、市場の動向と市場の法則を考慮し、それを認めています。

 

もう一方は、中小零細企業(MSME)部門です。まず、中小零細企業部門には国営の中小零細企業部門もあれば、非国営の民間中小零細企業部門もあります。つまり、単に民間部門ではないのです。キューバにも民間部門は存在しましたが、ここでは、拡大されました。というのは、ここでは農業生産のかなりの部分が民間農民や農業協同組合の手に渡っているためです。

自営業はありましたが、問題は、中小零細企業の発展がなければ、自営業が自営職業と混同されました。そして、すでに自営業を超えるような、一定の連関や関係が生まれ、組織となったことです。

 

イグナシオ・ラモネ:ええ、彼らはすでに賃金労働者を抱える小さな企業でした。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:公認されてはいなかったものの、そのように機能していた企業です。すなわち、私たちはこれまでにあった状況を現実に合わせ、この国が持つすべての可能性を活用するという、非常に首尾一貫したものを提案したということです。 つまり、社会主義建設において基本的な役割を果たすのは国営企業です。しかし、その経済活動を補完する民間部門があるということです。

 

イグナシオ・ラモネ:この民間市場部門とは、現在なにを代表していますか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:今日、中小零細企業のダイナミクスについて語るとき、人々はこう言います。「しかし、大いに成長しているよ」と。それらは、成長しています。比較的新しい過程です。今や、約10,000の企業があります。しかし、社会主義建設の一環として、私たちの概念のひとつは、主要な生産手段は国の手にあり、国営企業がそれを代表するということです。したがって、非国営部門の重要な貢献を否定することなく、経済の最大の比重は国営部門にあります。

写真:レボリューション・スタディーズ

社会経済システムの改善においても、これは比較的新しい分野であったと思います。私たちが今行っていることは、国営企業及び国営機関と非国営機関との関係にある、いくつかの歪みを是正することであり、そうすることで、非国営事業体のすべてが、私たちの社会における経済アクター全体の一員として、国家経済社会開発計画に貢献し、参加するようにすることです。このため、非国営部門との交流、キューバの国営企業部門との交流、そして、より首尾一貫して機能し、国営部門の貢献と非国家部門の貢献によって国の経済を現実に強化できるよう、私たちは現在、すべての一連の規制を改善しているところです。

 

ここで、私たちは、これらの企業の多くは、高度の技術をもち、イノベーションを持つ企業という概念から出発し、国営部門では、そういう企業であるように主張しています。なぜなら、国営企業であれ民間企業であれ、中小零細企業の特徴のひとつは、その発想や運営方法によって、より素早く変化に対応し、イノベーションの能力を持つ企業であるということです。

 

イグナシオ・ラモネ:規模もより小さいですね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:規模がより小さく、より柔軟な方法で事業を行うため、彼らが経済にもたらす貢献とダイナミズムは非常に重要です。

 

イグナシオ・ラモネ:この分野は、今後も引き続き拡大すると思いますか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:この部門は、今後も引き続き拡大すると思いますし、経済アクターのネットワークの一部を引き続き形成し、革命の敵とはならない、革命に貢献する部門となると思います。なぜなら、革命の条件の中で作られた部門だからです。米国政府はこの部門を革命に反対する部門に変えようとしています。

 

そこで、甚大な矛盾があります。米国には、国営部門を支援すべきではなく、中傷零細企業を変革の担い手とするために資金を投入すべきだと言う上院議員、下院議員、オピニオンリーダーがいます。また、中小零細企業(MSME)はキューバ国家が一定の体裁を整えるために作り出したものであり、切り捨てるべきだと言う人もいます。彼ら自身、矛盾しています。キューバでは起きない矛盾です。キューバでは、MSMEは社会主義建設を継続するために必要な企業構造の一部であり、国家経済社会開発計画に含まれており、それに関与しており、コミットしており、この努力に歪みが生じないように気を配っています。

 

イグナシオ・ラモネ:大統領、これからCOVID-19についてお話ししましょう。先ほど重要なことをおっしゃっていました。キューバは科学者たちのおかげで、またバイオ医薬品産業のおかげで、自国のワクチンで全人口に予防接種を行うことができた世界でも数少ない国のひとつです。これは、特に封鎖された国、制限された資源という枠の中では、 例外的な偉業です。この危機からどのような教訓を学びましたか? また、キューバが医療の面で世界にどのような新たな貢献ができるかも重要です。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:ラモネさん、まず、世界がCOVID-19によって震撼させられたという事実と、世界はCOVID-19から教訓を学ぶべきだということを話さなければならないと思います。COVID-19から世界が学ぶべき最初の教訓は、すべての国で強力な医療制度を実現するために、より大きな資源、より大きな資金、より大きなお金をつぎ込むべきだということだと思います。

 

イグナシオ・ラモネ : 公共性。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:公共性、抵抗力、そしてすべての人のためであり、少数派のためではないということです。

 

一方、COVID-19に関する国際協力は重要であり、利己主義ではありません。私は、少し理想主義かしれませんが、各自が持っている確信と関係あるかもしれませんが、革命の中で育ったものですから、 COVID-19の後、世界はもっと協力的になり、世界はもっと協力し、世界はもっとお互いを補い合うようになると期待していました。しかし、すべて反対のことが起こりました。世界は、戦争に向かい、制裁が増加し、封鎖に向かい、国際問題の解決のために、壁を作りました。

 

イグナシオ・ラモネ:ヘイトスピーチ、極右ですね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:ヘイトスピーチ、ソーシャルネットワークの問題、そこでは評判の殺人、いじめ、悪意、嘘、中傷、そして何よりも、あなたが強調したように、国際関係の改善に役立たないヘイトスピーチ、低俗なスピーチ、陳腐なスピーチが行われています。

 

これは、包摂的で、公平性を保証し、公正な新国際経済秩序が必要であることを私たちに示しています。

 

イグナシオ・ラモネ:連帯的でありたいです。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:連帯的でありたいです。現在の国際経済秩序とは正反対のものです。

 

私たちは、COVID-19から何を学んだでしょうか?最初の教訓は、私たちがラウル・カストロ革命軍将軍から学んだ教訓と関係があります。COVID-19は世界中を駆け巡り、COVID-19の第一報はすでに出始めていましたが、キューバではまだ感染者は出ていませんでした。私たちは2020年1月の話をしているのです。革命軍将軍は、世界で起きていることをすぐさま研究し、感染症に対処するための国家計画を準備しなければならないと私たちに言いました。即ち、私たちはCOVID-19に立ち向かうための包括的な作業プログラムや戦略を策定する能力を持たなければならないことを学びました。それは、すべての国家機関、社会機関、経済の非国家部門を巻き込むものであり、国として、この状況に立ち向かうための条件を整え、前もって準備する国の計画を想定するものでした。これが、最初に学んだことでした。なぜなら、この計画、戦略によって、私たちは事態を先取りすることができたのですから。

 

イグナシオ・ラモネ:COVID-19が世界に広まる前から、ある程度、準備していたのですね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:最初の症例が届く前から準備はしていました。このことは、世界に合った経験の中で、病気を研究し、今、説明しますが、その他のことを研究して、私たちの人々が能力を身に着けたことを意味しています。しかし、私たちが行ったこと、学んだことを最も包括するコンセプトは、革命軍将軍の観点です。戦略を準備し、計画を準備し、病気に対処する計画を準備しなさいというものです。

 

次に、国際協力です。 私たちはただちにキューバの医療使節団を46カ国以上に派遣しました。そこでは、当時、いくつかの国では、病気の中心地でした。

 

イグナシオ・ラモネ:イタリアのロンバルディア州ですね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:例えば、イタリアのロンバルディア州などです。そのおかげで、私たちはその人たちを支援し、助け、協力することができたのです。

 

イグナシオ・ラモネ:そして学ぶことも。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:しかし、私たちは学ぶこともできました!学んだのです。

 

医療使節団が戻ってくるたびに、私たちは彼らに会い、彼らは、経験したことをすべて私たちに伝え、私たちはその経験をすべて計画に反映させました。

 

第三に、分子生物学研究所のネットワークを構築することです。分子生物学研究所は、すべての検体を処理するための重要な要素となります。これらの感染症の場合には、一定の時期に、特にパンデミックがピークの時に検体は大量となります。しかし、パンデミックのピークではない時、病気がどの程度拡散しているかを知るために検体が参考データとなります。

 

医療システムにおける科学としての疫学の役割は、これらの疾病の多くもまた、その概念で立ち向かわなければならないからです。

 

イグナシオ・ラモネ:疫学には特殊な論理があります。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:疫学的な論理です。どのように感染を断ち、どのように回避し、どのように活動するか。社会におけるすべての組織の総合的な活動、特にキューバの場合、医療システムとの連携が重要であり、現在の状況の中でこのシステムは強固なものです、 いいですか、あなたに言ったように、私たちは封鎖が強化され、テロ支援国家リストに含まれた中で、キューバの医薬品規制機関である医薬品医療施設管理センター(CECMED)やバイオ製薬業界と医療システムの連携と調整が必要です。なぜなら、これにより、臨床試験の期間を短縮し、臨床試験の能力を提供し、病気の治療方法を完成させるために新薬を生み出したり、あるいは既存の薬の使用を提案したりする能力を提供するからです。

 

科学とイノベーションに基づく管理システムです。これは基本的な役割で、COVID-19との戦いに取り組んでいる専門家、科学者、機関を集めて、毎週火曜日の午後2時か3時に開催している会議を制度化しました。依然としてそれを維持しています。そこから、一連の科学調査が出ました。1,000以上の科学的研究、科学的研究テーマが生まれ、これらの研究結果の評価が行われ、そしてそこから私たちのワクチンの生成が生まれたのです。

 

デルタ株によるパンデミックのピークが始まったとき、私たちは世界のワクチン配布の仕組みがまったく不平等で、富裕層を優遇し、貧困層を優遇していないことを目の当たりにしたことを思い出します。

 

イグナシオ・ラモネ:しかも、貧しい人々も、ワクチンを購入しなければならなかったのです。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:その人たちは、ワクチンを購入しなければならず、私たちは、科学者たちに頼みました。「主権を持ち、これに対処するためにはキューバのワクチンが必要だ」と。 そして3ヵ月後、最初のワクチン候補を手に入れました。その後、時間が経過して、現在、5つのワクチン候補があり、そのうち3つは効率と有効性が十分に承認されたワクチンです。あとの2つは、臨床試験中ですが、私たちが、接種するときから非常に効果があるワクチンとなると思っています。そう、それがもう一つ学んだことです。ワクチンを製造する能力があればいいのですが、それはあまり頻繁にあるものではありません。10か国以下がワクチンを作ることができますが、「南」では皆無です。

 

イグナシオ・ラモネ:大国の中にもできなかった国もあります。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:成功しなかった大国もありましたが、私たちはその技術を他国と共有し、他国に移転しました。別な国と共有したのです。

 

自国のワクチンを作る能力を持つことです。しかも、短期間で集団予防接種キャンペーンを実施できる能力を持つことです。私たちは2年足らずで4,000万回分のワクチンを接種しましたが、そのためには、社会レベル、地域レベルで組織化されたシステムが必要です。なぜなら、診療所でワクチンを接種しただけでなく、学校のような機関でもほとんどでワクチン診療所を設け、ワクチンを接種するために、社会的機関とともに、医療関係者がいました。

 

イグナシオ・ラモネ:そしてこれは、先ほどおっしゃったような封鎖が強化された中でのことだったのですね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:私が持っていない情報がひとつあります。私たちにとって、そうした状況の中で計算をすることは、不可能だったと思います。 当時、私たちはCOVID-19をめぐって世界で何が起きているのかをよく調べましたが、研究開発のために製薬会社に提供された数十億ドルの資金を見たとき、私たちの科学機関には5,000万ドル以上の資金を提供することさえできなかったと言えます。

 

もちろん、「そんなはずはない」とあなたは、言うかもしれませんが、そこには先ほど説明したような、あらゆる知識があるのです。

 

イグナシオ・ラモネ:すべての装置がここで働いているのです......。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:フィデル・カストロ最高司令官の先見的なアイデアから生まれたこれまでのすべての開発が、後にラウル・カストロ革命軍将軍によって、「科学極」の予算システムであったものが、医薬品、特にバイオテクノロジー医薬品の製造のための専用の強力な企業制度へと変化したのです。

 

イグナシオ・ラモネ:そして輸出も。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:もしそのような準備がなかったら、私たちはそのような事態に対処できなかったでしょう!ワクチンは、国を救いました。一回のワクチン接種で国民の60%以上を接種し、パンデミックのピークはすぐに下がりました。

 

イグナシオ・ラモネ:「パンデミックの曲線は...

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:キューバの国境を開放した後、オミクロン株が侵入し、世界ではパンデミックのピークがより高くなりましたが、キューバではそれまでのピークの3分の1で、しかも2~3週間しか続きませんでした。なぜなら、すでに私たちの国民はワクチンを2回接種しており、免疫の水準が高くなったからです。

 

イグナシオ・ラモネ:免疫が高かったのですね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:そうなのです。これは別の教訓です。

 

社会科学の役割は、伝染病のような問題に直面したときに......

 

イグナシオ・ラモネ:COVID-19は、同じ伝染病です。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:健康上の問題としてだけとらえるのではなく、心理的な影響もあり、社会の動きも、別な状況において、孤立した状況において、あるいは物理的に孤立した状況において、あなたが弱者を扱うように、違ってきます。これらのことが、提案につながったのです。

 

イグナシオ・ラモネ:そうです。それが死亡率にも影響していますね

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:これらすべてが、この制度すべてに関連して、社会科学からの分析と提案につながりました。

 

正直で明確、タイムリーで体系的な情報です。 私たちのメディアには毎日、最も優秀な疫学者の一人でさえオピニオンリーダーになるスペースがありました。

 

イグナシオ・ラモネ:彼は、著名になりましたね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:彼は毎日、何が起きているのか、何人の死者が出ているのか、何人の感染者が出ているのか、感染率がどのように上下しているのか、どのように行動しているのかを説明しました。

 

イグナシオ・ラモネ:キューバは当時、ここでお話ししたような困難にもかかわらず、医療という点では大国であることを実証、あるいは確認しました。キューバの科学者が人類に発表できる貢献について、あなたはどのような発表をすることができますか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:現時点では、私たちが学んだことに基づいて、私たちは、何を提案したでしょうか? 私たちは、経験と教訓の大要を作成しました。そして、これらの教訓を私たちの医療システムに取り入れるために、国家レベルで実施する演習を設計しています。

 

第二に、このプログラムは、診断、緊急治療、病気の総合的な分析など、あらゆる側面をリンクさせる「単一の医療」というコンセプトで、系統的に開催されている同じ会議ですでに発表されています。

 

学んだことの中で、実際にあったことは、理念を確認することでした。例えば、フィデルが考案した家庭医の概念によるプライマリー・ヘルスケアの役割などです。

 

イグナシオ・ラモネ:近所から、家族から。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:COVID-19によって、プライマリ・ケアがいかに有用であるかが確認されました。そして現在、そのプライマリ・ケアの中で、これらのCOVID-19で学んだことを改善しているところです。

 

私たちは、引き続き診断能力を開発しています。RCPの活用に加え、COVID-19の時点で、私たちは科学機関とともに独自の診断メカニズムや診断技術を考案し、彼らもそれを支持してくれました。

 

私たちはCOVID-19が残した結果の研究を継続し、世界と共有することができます。この問題は、単に病気と戦うということではなく、命を救うということでもなく、COVID-19患者であった人々の生活の質をいかに保障するかということでした。そして、一連の研究があります。

 

イグナシオ・ラモネ:この病気で生存した人たちですね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:私たちはCOVID-19で適用している科学技術イノベーションシステムの開発を維持しています。それゆえ、会議を継続し、毎週検討し、特定のテーマを調べなおしています。

 

重要な前進があることを伝えたいのですが、それを発表する時は来るでしょう。臨床結果を待つことになるでしょう。しかし、多くの病気の研究において重要な前進があり、とりわけ、バイオテクノロジーによる医薬品や、さまざまな種類の癌の病気に対する高度な技術を用いた治療法において重要な前進があります。私たちの国民は、高齢化していますが、アルツハイマーの問題、パーキンソン病、一連の重要な退行性病の研究を行っています。つまり、広範な部門で科学的成果をあげており、それらは、キューバの医療の質を継続的に強化するために、国家レベルだけでなく、国際レベルにも影響を及ぼすと信じています。

 

現在、封鎖強化の中で、米国政府から認可を受け、米国の研究機関と共同で2つの重要な臨床試験を実施しています。ひとつは肺がんに対するワクチンで、すでにキューバで試験し、非常に良好な結果を得ています。もうひとつは、ヘバープロトPという薬で、最近臨床試験が承認され、糖尿病を患っている人々の足潰瘍の治療に役立つもので、糖尿病性足潰瘍を治癒させ、人間にとって最も不幸なことのひとつである切断を回避するという、素晴らしいレベルの薬です。今日、世界では、どの国でも切断手術には何千ドルもの費用がかかり、さらに、この病気の進行に対する解決策が残念ながら切断手術である糖尿病患者も大勢います。これも重要な結果です。

 

イグナシオ・ラモネ:この言葉は、頻繁に取り上げられることになるでしょう。つまり、世界の多くの人々に多くの希望を与えるものであり、キューバの科学がこのような結果を達成することを期待しましょう、大統領。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:キューバの科学がこれらの謎を解明できることを期待しています。 また、私たちは、デング熱に対するワクチンの研究にも取り組んでいます。

 

イグナシオ・ラモネ:デング熱に対する日本のワクチンが、すでにありますが。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:私たちは、デング熱には4種類ほどの株がありますが、そのうちの1つの株だけでなく、存在するすべてのタイプのデング熱に効くワクチンの研究をしています。

 

イグナシオ・ラモネ:素晴らしいことですね!

 

大統領、経済と技術に関するこのブロックの最後の質問です。

 

あなたはテクノロジーの活用を提唱していますが、テクノロジー、人工知能、デジタル化が私たちの社会を変えつつあることは周知の事実です。あなたは、特にキューバ社会のコンピュータ化に力を入れておられますが、このプロジェクトの進捗状況と、社会のコンピュータ化がキューバ国民にもたらすものについてお聞かせください。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:私たちは、政府の活動において、3つの優先事項を定義しました。まず、社会のコンピュータ化ですが、現在ではそのコンセプトを進め、社会のデジタル・トランスフォーメーションと改めました。同じように見えますが、同じではありません。すでに問題は、すべてのデジタル・プラットフォームを実行するだけでなく、生活の概念、デジタル方式で活動する方法を問題としています。つまり、私たちはデジタル・トランスフォーメーションを、科学イノベーション、社会コミュニケーションとともに、政府活動の柱として擁護しているのです。これらは政府の3本柱であり、非常に密接に関連しています。

 

イグナシオ・ラモネ:金融セクターにおいても、デジタル・トランスフォーメーションは非常に重要です。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:いいですか、私が学習経験として強調した要素のひとつに、COVID-19で行われた社会的あるいは機関的コミュニケーションがあります。

 

つまり、社会のデジタル・トランスフォーメーションが現実のものとなったということです。 キューバでは、携帯電話に登録している人は770万人、インターネットにアクセスしている人は約800万人で、モバイルネットワークは拡大しましたが、まだカバー率を上げる必要があります。技術における投資を何で行うかが関係しています。これは、こうした問題すべてで出てくる問題ですが、私たちは水準を維持することができました。

 

イグナシオ・ラモネ:それはコストがかかりますね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:現在、私たちは世界平均を上回っています。

 

デジタル・トランスフォーメーション、人工知能、デジタル経済の問題については、最新の議論が行われています。この議論の一環として、私たちは数年前にキューバ・コンピュータ科学者連合を設立し、これらの問題に関するすべての人々や専門家が集まっています。

 

COVID-19の最悪の時期に、米国がキューバに酸素と肺の人工呼吸器を拒否したとき、「私たちは、私たちの機関の若い科学者のグループにその任務を与えました」。

 

今後数週間で、国のデジタル・トランスフォーメーション政策、国のデジタル・アジェンダ、人工知能の使用に関する政策の更新が閣僚理事会に提出される予定です。そこでは、全体的な検討、つまり効率の面から、住民サービスの生産過程において与えられる成果によってAIだけを検討するのではなく、倫理的側面と、AIに関して考慮しなければならないすべての要因も検討されます。

 

私たちはデジタル・トランスフォーメーションを実現し、以下の分野にも人工知能の貢献をもたらします。なぜなら、デジタル・トランスフォーメーションと人工知能は、生産およびサービス・プロセスの効率化を達成する上で大いに役立つからです。特に、私たちが、国がより高齢化して劇的な人口問題に取り組まなければならない時、私たちのサービス生産プロセスが、より効率よいように、より少ない人数で大部分の人々をケアすることを追求しなければなりません。そのため、自動化、コンピュータ化、デジタル化は良い結果を得るための道具なのです。

 

デジタル化は行政の分野にも応用されています。なぜなら、私たちがデジタル・トランスフォーメーションを展開している重要な要素のひとつが電子政府であり、あらゆる政府活動と市民の相互作用だからです。その相互作用は、政府の行動に多くの市民が参加する場所を保障するものです。例えば、国内のすべての基礎行政区、すべての県、すべての省庁、そしてほとんどの機関が、国民と対話するためのデジタル・ポータルやウェブ・プラットフォームを持つようになりました。それらを通じて住民と相互関係をもつのです。

 

最近では、国会の承認に提出された法律草案が、それ以前にデジタル・プラットフォームに掲載され、国民との対話を通じて国民の見解が集められました。そして、修正が国会に届けられ、基準の制定の過程を強化し、改善しました。

 

まもなく、ほとんどできており、最終成果をあげつつあるのですが、キューバ市民ポータルを公開する予定です。このポータルは、キューバ国民が自分のプロフィールを作成し、事務所を通さず、紙を介さずに多くの重要な手続きにアクセスできるプラットフォームとなります。そして、生活が一層容易になります。

 

実際、これらの手続きの多くは、すでに一定の組織や機関のプラットフォーム上にあります。しかし、これからは、これらすべての手続きを、あなたのプロフィールと単一のプラットフォーム上で行うことができるようになり、さらに、その一部として、国民のための多くの情報が提供されるようになります。プロセスについて、手続きについて、法律について、特定の問題について疑問があれば、それを明らかにすることができます。これは、プラットフォームにおけるもう一つの飛躍です。

 

私たちは、デジタル・トランスフォーメーションと人工知能の活用というこのプロセス全体を、サイバー攻撃を防ぎ、これらすべてのプラットフォームでセキュリティを確保するためのサイバーセキュリティの開発とともに支援しています。

デジタル・トランスフォーメーションの重要な要素として、電子政府があります。

 

非常に創造的な方法で、特に若い人たちの活動には常に感心させられますが、今日、私たちの国には、キューバ人が現地で開発したコンピュータ・アプリケーションやモバイル・アプリケーションの特別室があり、これらは完璧に動作します。すでに、私たちの店には、別な品もあります。アプクリスと言われるアプリケーションです。それからは、キューバやその他の国のアプリケーションをダウンロードできます。しかし、そこには、いくつかのキューバのアプリケーションがあり、そのうちの多くは住民が頻繁に利用するものとなっています。

 

キューバ製のオペレーティング・システムもありますし、キューバ製のコンピュータ機器、ノートパソコン、タブレット、PCなど、我々のデザインや依然として資金調達の問題からまだ制限がありますが、製品もあります。

 

イグナシオ・ラモネ:ロボット化も進んでいますね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:ロボット化の経験もあります。そのひとつがCOVID-19です。COVID-19が病院の崩壊を防ぐために集中治療病棟を拡張しようとしたとき、肺呼吸器を購入するために企業に行くたびに、封鎖法を理由に断られました。そこで私たちは、ある研究機関の若い科学者グループにこの仕事を任せ、試作品を作りました。そして今日、この試作品はすでに高性能の肺呼吸器となっており、デジタル化も進んでいます。 素晴らしいと言えます。その使用と品質は、我が国の集中治療と麻酔の最高の専門家、高度な資格を持つ医療関係者によって確認されています。これはキューバ人として感じるもう一つの誇りであり、若者を含む我が国の科学者に何かを要求することであり、即座の対応、しかし高い対応、つまり国際的な開発レベルの対応があると言えます。

 

イグナシオ・ラモネ:人工知能のアプリケーションを独自に開発していますか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:はい、現在開発中の独自のプラットフォーム、独自のアプリケーション、生産・サービス・プロセスに組み込むための独自の設計があります。

 

イグナシオ・ラモネ: 量子コンピュータ化に取り組んでいますか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:それもあります。 もちろん、私たちはすでに量子コンピュータを導入しており、それにはさまざまな問題がありますが、準備はできています。

 

イグナシオ・ラモネ:専門家がいるのですね。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:準備はできていますし、訓練を受けた専門家もいます。あらゆるレベルの知識、新たな知識、国際的交流もあります。

 

イグナシオ・ラモネ:ラテンアメリカ統合の枠組みの中で、特にこのような問題に取り組むことは可能だと思いますか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:そう思います。私たちが提案したことのひとつでした。

 

ベネズエラで開催されたALBA(米州ボリーバル同盟)の記念式典とALBAサミットに出席した際、デジタル化と人工知能の問題に関連して、ラテンアメリカ・カリブ海諸国、ALBA諸国を統合するプラットフォームを構築する必要性が提起されました。

 

私たちは控えめに、わが国で発展に協力したいと述べました。         

 

イグナシオ・ラモネ:教育機関、特に専門的な大学に対してもですか?

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:教育機関、トレーニング、共同プロジェクトへの参加、他国へのアプリケーションの提供などです。 これはすでに効果が出ていることのひとつです。

 

私たちは銀行化、つまりキューバの銀行業務のデジタル化のプロセスを開始しました。これは、現在成果を上げつつあることと関係しています。    

 

イグナシオ・ラモネ:これはまた、金融的には、現物貨幣の消滅にも役立ちます。現物貨幣は、製造し、輸送し、購入しなければなりませんから。

 

ミゲル・M・ディアス=カネル:現金です。また、プロセスの地理参照システム、プロセスのジオロケーション、これらの技術を利用した作物の推定収穫量のための作業など、多くの用途があります。

 

キューバの若い科学者や専門家の間には、知識と開発に対する旺盛な意欲があります。

 

(新藤通弘訳)

 

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